ごあいさつ

2007年7月23日〜29日
東京・銀座月光荘ギャラリー2にて個展・「信濃追分のスケッチと油彩」を開催しました。
以下は会場でお配りしたメッセージです。
WEBで絵をごらんいただく方々にもご挨拶にかえてお伝えします。

しなの鉄道・信濃追分駅の宿直室の窓には、国鉄時代からの受け継ぎ品として厚地の暗幕がかかっています。夜勤を終えて寝入るときに使ったのでしょう。

ある日、暗幕をバックにちゃぶ台の上に果物が転がっていました。
ありきたりの状景でしたが、リンゴの色とミカンの色が、鮮明に見えました。

原色と暗色のコントラストの響き―
ものの内面をつかむひとつのヒントになる、と思いました。

また、夜の帳が降りかけるとき、自然は昼間と違う顔を見せてくれることがあります。

例えば、信濃追分駅のくだりホームにある、大きな「もみじ」。
秋になると信州ブルーの空をバックに補色を散りばめ、それは見事、感服の至りです。
しかし、夕暮れ、灯りが欲しくなるとき「もみじ」は凄みます。

美しさと怖ろしさの背反を見せてくれる「もみじ」。
昼の顔、夜の顔があってこその魅力です。

自然に潜む この面白さを演出してみようと、色を選び、色をつくり、色を置きました。

一連の作業のなかで、対象物の余分な虚飾は捨て、木と道を自然から意図的に拝借し、闇のもつ奥深さを追求しました。

信濃追分には昼の部と夜の部の顔をもつ、魂を揺さぶる景観がたくさん在るということを感じていただければ幸甚です。

2007年7月
                  りんどう林蔵

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